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型押しコードバンが生まれた理由

「コードバン」と聞くとどんなイメージをお持ちですか?
他のどの素材にもない独特な深みのあるツヤに心が揺さぶられる。
一度は使ってみたいと思わせるステータスのようなものを感じる。
希少性の高い高級素材の代名詞ともいうべき素材のひとつ。
そんな憧れのコードバン。
誰もが思い浮かべるのは滑らかでツルッとした表面のものでしょう。
ですがKUBERA9981で使用しているコードバンは型押しを施したもの。
誰もが最初はコードバンであると思わずに驚きます。
それもそのはずでほとんどの方が「型押し」なんて想像もしていないから。
ではなぜコードバンに型押しをしようと思ったのか。
そこにはデザイナーの想いがこれでもかと詰まっているのです。
コードバンのデメリット
まずコードバンを使用したことがある方ならわかると思いますが扱う上でなかなかに気を使います。
・目立つ傷
・水濡れによる膨れ
・磨かないと曇る光沢感
素材の特性上キズや水といった耐性の弱さが語られることが多いコードバン。
自分でケアをしながら使用するのとなにもせず使い込むのとでは年数が経つほどに状態の差が出ます。専用クリームを使ったケアでなくとも定期的に乾拭きをするだけでも変わってくるのです。
定期的に注意深くお手入れをしている方は果たしてどれだけの方がいるでしょうか。
お店に持ち込んでお任せしている方もいるかと思います。
そんな扱いが難しい素材。
物理的なデメリットと心理的なデメリットを解消するコードバンを作れないだろうか?
これがコードバンに型押しを施すことを思いついたきっかけでした。
型押しコードバンの誕生は思わぬところで
KUBERA9981で使用しているコードバンはレーデルオガワ社製のものです。
染色や仕上げなど世界に誇れるものだけにより憧れも強い。
使用しているブランドも誰もが知っているブランドばかり。
どのブランドもレーデルオガワにある、状態が良い、できるだけ大判のものを求める。
素材そのもののサイズ自体が大きくないだけに歩留まりの悪さが気になるから。
例えば長財布2つ分取れないもの、
真ん中に傷が入ってしまっているものは欲しくない。
ではそういったコードバンはどうなっているのか?
レーデルオガワ社ではそのまま使用されることなく倉庫の隅に保管されていました。
思うような大きさがなかったり製品として取りたい場所に小さな傷があるため使いづらいだけ。
もちろん状態に問題はない。
デザイナーはそこに目を付けました。
素材のクオリティはどう見ても一級品なのに使用されないままなのは大きな損失。
傷の部分は製品に使えないから不効率かもしれないが、
多少大きさを制限されても製品化するために使用したい。
この出来上がったコードバンは世に出してこそ価値がある!と。
そこで全てのデメリットを解消するにはどうすればいいか考えに考え、
導き出したのが「型押し」という手法でした。
型押しは扱いの難しさの解消と生産に伴う効率の悪さの解消につながる。
こうして実現に向けてさらに思いが膨らみ動き出しました。
型押しコードバンの完成は伝統を紡ぐものに
実際のところコードバンの職人も非常にデリケートな素材なだけに毎日相当気を使っているそうです。
それこそ牛革などの製造より3~4倍も時間がかかるのです。
案の定最初は型押しを依頼した東京向島にある型屋の職人にもことごとく嫌がられました。
しかし製品化したい思いを伝え頼みこんでやってもらったところまだ改良の余地はあれどなんとかできそうという感じでした。
そこからは俄然やる気も出てきて膨大な量の型サンプルを初めから見ていくと1940年代くらいからありとてつもない数。
それだけ歴史の古い型屋であり技術的にも任せて間違いがないと確信しました。
そして1980~90年代あたりまできた時に当時人気のあった型の模様を発見。
それはとても品があり時代を感じさせないオーセンティックなもので、
コードバンといういつの時代も憧れの的である素材とも相性は抜群に思えたのです。
これだ!
その後も試行錯誤して完成したのがKUBERA9981で使用している型押しコードバンです。
型押しを施すことで従来のコードバンの概念を変えたいと思っているわけではなく、
手作業や伝統的なものは残していく必要があり変えるべきではない。
ただより多くの方にもっと身近に感じてもらえるようになれば、と。
携わっている人たちの想いが詰まった想像以上の出来をひとりでも多くの方に見て触れていただきたく思っています。
ぜひ、オンラインストアでご覧くださいませ。
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